夏休みの有効活用 ~受験に向けた基礎固めの大切さ

夏を制する者は コラム

執筆者:河浜一也渡邉真人

かつての夏は詰め込み教育

 私たちが子どもの頃、よく耳にした言葉に「夏を制する者は受験を制する」というものがありました。当時は暗記中心の入試が主流で、膨大な量の知識を詰め込む必要がありました。そのため、長期休暇である夏休みを徹底的に勉強に費やすことが、受験に向けた鍵となっていました。
1970年代、大学入試で扱われる範囲が現在と比べものにならないほど広範囲に及んでいました。高校で習う内容の多くが当時は中学校の段階で学習されており、生徒は非常に多くのことを覚える必要がありました。今から振り返ると、子どもたちに課された負担は相当なものだったと言えるでしょう。
 しかし、当時は現代ほどゲームやインターネット、スポーツ教室などの勉強を妨げる要因が少なかったことも事実です。子供たちは外で十分に遊んだ上で、残りの時間を学習に費やすことができていたのです。その意味では、現代より学習に専念できる環境が整っていたとも言えます。
総じて、当時の受験は、いかに多くの知識を記憶し、テスト時にそれを再現できるかが重要な鍵となっていました。したがって、長期休暇である夏休みを徹底的に勉強に費やすことが何より求められていたのです。こうした背景から、夏を制すれば受験も制することができるという言葉が生まれたと考えられます。

みんなで勉強中

 一方、現代の入試はかつてとは大きく異なっています。記憶力だけでなく、思考力や応用力、判断力が問われる問題が中心となっているのが大きな特徴です。単に知識を暗記するだけでは不十分で、与えられた資料を読み解き、習得した知識を応用して考える力が重視されています。
このように入試問題が変わったのは、ちょうどコロナ禍に重なった入試改革の影響が大きいと考えられます。コロナ禍での議論は控えめでしたが、実際には大規模かつ画期的な入試改革が進められていたのです。入試に求められる力が、従来の記憶力中心から思考力・判断力中心に大きくシフトしたのがこの時期なのです。
 当塾では、こうした変化を予期してコロナ禍前から中3の指導方針を見直し始めていました。特に夏期講習での指導に力を入れ、従来より2ヶ月早く基礎固めの対策プリントに取り組ませるようにしました。学校からの宿題もあり、生徒の負担は大きくなりましたが、秋以降の応用学習を見据えた対策だったのです。
 つまり、応用力を伸ばすためには、基礎となる知識の確実な習得が不可欠となっています。表面的な暗記ではなく、深い理解が求められるのが現代の入試問題だからです。そのため、これまで10月から11月にかけて行っていた基礎固めを、夏休みに前倒しして集中的に実施することとしました。
具体的には、社会科や理科の基本概念、数学の計算力、英語の語彙力など、いわゆる「受験基礎事項」と呼ばれる部分を夏期講習で徹底的に鍛えています。加えて、宿題の出題と解答のチェックも行い、家庭学習の定着を図っています。
 また、傾向の変化に対応すべく、従来の暗記中心の学習に加え、ビジュアル的な問題にも力を入れるようにしました。例えば社会科では歴史的人物の写真を見て判断する問題、理科では実験器具の写真からその実験を推測する問題などに取り組ませています。

夏の学習|基礎固めをしっかりと

 こうした基礎固めを夏休みに行うことで、秋以降の応用学習への足がかりが整うことになります。思考力や判断力を鍛える時間を十分に確保でき、本番の入試に向けたスムーズな準備が可能になるのです。
 一方で、この夏に基礎固めを怠ってしまうと、秋以降の応用学習が極めて難しくなることは間違いありません。応用する前の段階から足元が揺らぐことになり、結果として本番で実力を発揮できなくなる可能性が高まるでしょう。
したがって私から受験生の皆さんへのアドバイスは、この夏休みを基礎固めの絶好の機会ととらえ、着実な学習に励むことです。塾や予備校のカリキュラムに加え、宿題や自主学習にも真剣に取り組んでください。
 基礎が万全であれば、秋以降の応用学習もスムーズに進められるはずです。そうすれば、最終的に思考力や判断力、表現力が求められる入試問題にも対応できる実力が身につくことでしょう。
 また、保護者の皆様へのアドバイスは、子どもの学習を適切に支援することです。子どもの頑張りを認め、学習環境を整えるなど、精神的・物理的な面でのフォローをお願いいたします。
部活動やクラブ活動にも打ち込む生徒が増えている中で、夏休みの活用は一層重要になっています。子供と一緒になって頑張れば、この夏が次のステップへの大きな弾みとなることでしょう。
 時代は変わっても、受験に向けた夏休みの活用は欠かせません。ただし、昔と異なり、単なる暗記ではなく、思考力や応用力を養う基礎固めが何より重要なのが現代の課題です。
 この夏を制することができれば、つまり基礎をしっかりと築くことができれば、秋以降の応用学習が難なくこなせるはずです。そして、最終的に入試でも実力を存分に発揮できるようになるでしょう。
受験生の皆さん、保護者の皆様、一緒に力を合わせてこの夏を制しましょう。基礎固めに全力を尽くせば、必ずや夢の合格に一歩近づくことができます。「夏を制する者は受験を制する」のです。

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