世界を変えた「なぜ?」の力――広島出身のノーベル化学賞受賞者から考える、子どもたちの学び

秋の広島の街並みを背景に、科学の教科書を開いて考える女子中学生。「世界を変えた『なぜ?』の力~広島から未来へつながる学び」の文字と化学の分子模型が描かれた、探究心と学ぶ楽しさを表現した画像。 コラム

2026年10月7日、うれしいニュースが飛び込んできました。

東京理科大学名誉教授の硤合憲三(そあい・けんそう)先生が、今年のノーベル化学賞を受賞されることが決まりました。

硤合先生は広島県安芸郡府中町のご出身。小学校から高校まで広島大学附属の学校で学ばれた、広島にゆかりの深い研究者です。

世界的な研究者の快挙は、それだけでも素晴らしいニュースですが、広島で育ち、学ばれた方がノーベル賞に選ばれたと聞くと、私たちにとっては一段と身近に感じられます。

塾で子どもたちの勉強を見ている私たちにとっても、今回のニュースには、改めて考えさせられることがありました。

それは、「なぜだろう?」と思うことの大切さです。

「右手」と「左手」の違いを研究する?

今回、硤合先生が共同受賞者のアンリ・カガン名誉教授とともに評価されたのは、「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒作用の発見」に関する研究です。

こう書くと、何のことだかさっぱり分かりませんね。

少し身近な例で考えてみましょう。

私たちの右手と左手は、鏡に映したようによく似た形をしています。でも、右手用の手袋を左手にはめようとすると、うまく入りません。

実は、分子の世界にも、これと似た関係があります。

同じ材料でできていても、右手と左手のように互いに鏡写しの形をした分子が存在するのです。そして、不思議なことに、生物の体をつくるアミノ酸のほとんどは、そのうちの片方の形に偏っています。

「どうして片方ばかりなのだろう?」

この謎は、生命の起源にも関わる重要な問題の一つです。

硤合先生は、ある化学反応で生まれた物質が、自ら同じ反応を促す働きを持つことを発見されました。しかも、最初はほんのわずかだった右型と左型の偏りが、反応を繰り返すうちに大きくなっていくのです。

この発見は「硤合反応」として知られ、生命を構成する分子がなぜ一方の形に偏っているのか、その謎を考えるための重要な手がかりとなっています。

もちろん、生命の起源がすべて解明されたわけではありません。

それでも、一つの疑問を出発点に、長い年月をかけて研究を積み重ね、世界の科学に新しい知見をもたらしたことは、本当に素晴らしいことだと思います。

勉強でも大切にしたい「なぜ、そうなるのか」

さて、少し話を身近な勉強に戻しましょう。

子どもたちの勉強を見ていると、答えは合っているのに、「どうしてそうなるの?」と聞かれるとうまく説明できないことがあります。

例えば、中学生の数学。

方程式の計算で、右辺に移すとプラスがマイナスになる「移項」を覚えている子はたくさんいます。

でも、「なぜ符号が変わるの?」と聞くと、答えに困ってしまう子も少なくありません。

本来は、等式の両辺から同じ数を引いたり、同じ数を足したりする操作を簡単に表したものです。その仕組みが分かっていれば、少し複雑な方程式になっても考えながら解くことができます。

理科でも同じです。

「電流が流れる」「気圧が変わる」「化学反応が起こる」といった現象について、用語や公式を覚えることはもちろん必要です。しかし、そこで一歩踏み込んで、「なぜそうなるのか」を考えてみると、知識がばらばらの暗記事項ではなく、つながりを持った理解へと変わっていきます。

社会でも、歴史上の出来事を年号と一緒に覚えるだけでなく、「なぜその改革が必要だったのか」「なぜ争いが起こったのか」を考えることで、時代の流れが見えやすくなります。

もちろん、すべての学習に時間をかけて理由を考えればよいわけではありません。漢字や英単語、計算の基本など、繰り返し練習して身につけなければならないこともたくさんあります。

大切なのは、覚えることと、理解することの両方をおろそかにしないこと。

私たちが日々の指導で大事にしているのも、そのバランスです。

広島の高校入試でも求められる「考える力」

こうした学習の姿勢は、実際の入試にもつながっています。

広島県の公立高校入試では、学力検査だけでなく、自分の考えや経験などを伝える「自己表現」も実施されています。

また、教科の学力検査においても、身につけた知識を使って考えることや、資料・文章から必要な情報を読み取ることが大切です。

大学入学共通テストでも、知識・技能に加えて、思考力や判断力を問うことが出題方針として重視されています。

つまり、単にたくさん覚えているだけでは対応しにくい場面があるということです。

ただし、ここで誤解してほしくないのは、「暗記は必要ない」という話ではないことです。

考えるためには、その材料となる知識が欠かせません。

英単語を知らなければ英文を読むことは難しいですし、数学の基本的な計算ができなければ、応用問題を考える余裕も生まれません。

基礎をしっかり身につけ、その知識を使って考える。

そして、自分がどう考えたのかを説明できるようにする。

こうした積み重ねが、結果として入試に対応する力にもつながっていくのだと思います。

10月は、勉強の中身が一段と深まる時期

10月に入り、学校の学習も本格的に進んできました。

中学生では、数学や英語を中心に、それまで習った内容を理解していることが前提となる単元が増えてきます。

特に数学は、途中で分からなくなったところをそのままにしていると、その後の学習にも影響が出やすい教科です。

小学生でも、学年が上がるにつれて、割合や速さ、分数など、ただ計算方法を覚えるだけでは理解しにくい内容が増えていきます。

この時期、私たちが注意して見ているのは、「問題が解けたかどうか」だけでなく、「どこまで分かって解いているか」という点です。

答えが間違っていても、考え方は合っていて計算ミスをしただけなら、必要な練習は比較的はっきりしています。

反対に、答えが合っていても、解き方を丸ごと覚えているだけなら、少し問題の形が変わると手が止まってしまうかもしれません。

同じ80点でも、その中身は一人ひとり違います。

だからこそ、テストの点数だけを見て終わるのではなく、どこでつまずいているのか、何が理解できていないのかを確かめることが大切です。

河浜塾Personalでは、一人ひとりの学習状況を見ながら、必要に応じて前の学年の内容まで戻って確認することもあります。

先に進むことも大事ですが、分からないまま進まないことも、同じくらい大事だと考えています。

ご家庭でも「どうしてだろう?」を楽しんでみてください

ところで、子どもの「なぜ?」は、教科書の中だけにあるわけではありません。

「どうして夕焼けは赤いの?」

「どうして秋になると葉っぱの色が変わるの?」

「どうして同じものなのに、お店によって値段が違うの?」

日常生活には、考えてみると不思議なことがたくさんあります。

そんなとき、大人がすぐに正解を教える必要はありません。

「本当だね。どうしてだと思う?」

「何か理由があるのかな?」

そんなやり取りだけでも、子どもが自分なりに考えるきっかけになります。

もちろん、いつも正しい答えにたどり着くとは限りません。大人にも分からないことはあります。

そのときには、一緒に調べてみればよいのだと思います。

むしろ、大人が「それは知らなかった」「なるほど、そういうことか」と驚く姿を見せることも、子どもにとってはよい経験になるのではないでしょうか。

学ぶことは、学校のテストで点数を取るためだけのものではありません。

知らなかったことを知る。分からなかったことが分かる。そして、そこからまた新しい疑問が生まれる。

そうした経験の積み重ねが、学ぶことそのものへの興味につながっていきます。

小さな「分かった!」を積み重ねる秋に

硤合先生のノーベル化学賞受賞は、広島にとって本当にうれしいニュースでした。

府中町で育ち、広島で学んだ一人の研究者が、長年取り組んできた研究によって世界的な評価を受けたことは、今、広島で学んでいる子どもたちにとっても、大きな励みになると思います。

とはいえ、すべての子どもが研究者を目指すわけではありませんし、壮大な夢や目標を持っていなければならないわけでもありません。

目の前の問題が一つ解けた。

昨日まで分からなかったことが、今日は理解できた。

自分で考えて、答えにたどり着けた。

そんな小さな経験も、子どもたちにとっては大切な成長です。

10月は、じっくり勉強に取り組むのに良い季節です。

この秋は、問題を何問解いたか、どれだけ先に進んだかだけでなく、「なぜそうなるのか、自分で説明できるようになったか」にも、少し目を向けてみてはいかがでしょうか。

河浜塾Personalも、広島市安佐南区・安佐北区・東区の各教室で、子どもたち一人ひとりの「分かった!」を大切にしながら、日々の学習を支えてまいります。

勉強の進め方や、今の学習状況について気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

この秋も、子どもたちと一緒に、じっくり学びを深めていきたいと思います。

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